北米オールドログハウス物語



 北米大陸には、開拓時代に建てられたログハウスがいくつも残っている。 経年変化で灰色になり、ものによっては倒壊して土へと変わりつつある。 そんなオールドログに思いを馳せる人物が木彩工房の辻 裕行さん。 彼からオールドログの魅力について聞いてみた。



 木彩工房の辻裕行さんは、毎年のようにカナダやアメリカを訪れている。その目的は、オールドロ グとの出会い。何時間も車を走らせてようやく1軒の家が現れる広大な大地に、ひっそりとたたずむ オールドログを訪ねて回る。そしてシャッターを何度も切る。時には倒壊して再び土に還る寸前のオ ールドログにさえ、美しさを感じてカメラに収める。それがやがて、辻さんのログハウス作りにフィード バックされていく。 そんな辻さんにオールドログの魅力について聞いてみた。


○辻さんが興味を持っている北米のオールドログって、どんなものなのですか?
◆アメリカ大陸に渡った開拓民が、現地に生えていた木と簡単な道具だけで作ったログハウスですね。

○どのようにして北米の開拓民はログハウスを作っていたのですか?
◆木を切り倒した後、クサビを使って木を挽き割りにします。現代のように美しく製材することはありませんし、そん な機械もありません。その代わり木の繊維を傷つけないので、ログ材が長持ちするんです。木の繊維を切断したと ころからは水分が進入しやすいのですよ。木というものは、水分を根から吸収するわけですから。メンテナンスをま ったくしない状態でもオールドログが残っているのは、それも理由のひとつです。

○オールドログは家として今も使われているのですか?
◆どちらかというと、バーン(畜舎)としての利用が多いです。現在残っているオールドログのほとんは、バーンとし て使われています。もっとも新しいバーンは2×4で建てられることが多いですね。

○オールドログがチンクダブテイルで建てられていたのは何故なのでしょう?
◆開拓時代なので、現代のような道具がないんです。近年のログハウスで使われているサドルノッチなんかは、スク ライバーがないと加工できません。開拓民はほとんどアックスだけで、ログハウスを作っていたのです。スクライバ ーがないから、自然にダブテイルノッチという工夫が生まれたのでしょうが、このノッチはけっこう難しいですね。

○辻さんが北米のオールドログに惹かれた理由は?
◆木が一番美しいのは、「シルバーグレー」なんですよ。経年変化で木が灰色になった状態です。実を言うと北米の オールドログは、オークションにおいて高値で取引されているんですよ。倒壊しかかったようなオールドログを金持 ちが買い取り、再生させているのです。向こうの人は、そういう古さに価値を感じるんですね。反対に日本人は新し いモノが好きで、ログハウスにしても何にしても新品の美しさを保とうとしがちですよね。それもまあ、いいのです が、私がめざしているのは50年60年経過した時に一番美しくなるログ ハウスなのです。

ダミー画像

○事務所内には古いギターが置いてありますね。辻さんはやはり古い モノに魅力を感じるわけですか?
◆古いというだけではダメですね。ビンテージでないと。本物でないと ビンテージにはなれないんです。このギター(ギブソン)はビンテージ ですが、他のギターはいくら古くてもビンテージとは呼ばれません。ロ グハウスも同様で、本物のハンドカットログでなければ、数十年後百年 後にビンテージにならないのではないかと考えます。 ログハウスを建てるなら、一度は本物を味わって欲しいといつも思って います。






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