ログ材が建築現場に到着したのは春。開封されたコンテナからまず出てきたのは、フィンランドの空気で包まれた木の香りだった。遠山さんの木の家へのこだわりが形になり始めた瞬間だ。新築を思い立ってからメーカーを決めるまで、請求した資料は約20社。見学会への約10回の参加を含め、展示場へも足しげく通った。雑誌やインターネットでも勉強した。だが、遠山さんは早い段階で、在来住宅を候補から外している。
「確かに木造住宅ではあるんですが、木の家という実感が乏しい。特にクロス張りの壁に納得できませんでした。もともと手づくりが好きで、棚を取り付
けやすい木の壁がいいと思っていましたから。木の壁なら、失敗して釘穴が残っても汚くないし、思い出になるでしょ」。
以前、知人が住むログハウスを見たときは「いいなぁ」と思いながらも自分が住むことになるとは考えてもみなかったが、木の家への思いから、結果的
にログハウスに行き着いたのだった。
メーカーをゲストハウスに決めたのは、施工例を見たとき、細部の仕上げの精度が高かったから。また、地元の職人が施工してくれるという点も気に入
った。実際にコミュニケーションがとりやすく、建築が始まってから変更してもらった部分も多いという。キッチンのダイニング側のガラス窓も、建築中にお願いした部分の一つ。おかげでキッチンが明るくなったし、死角がなくなって子供を目で追いやすく
なった。
まず床板を30ミリ厚のものにした。子供たちが走り回っても騒がしくなく、転んでもケガをしにくいクッション性を得るためだ。将来2部屋に間仕切ること
ができる子供部屋、天窓から差し込む自然光が明るく健康的な広々とした遊び場なども、子供たちに伸び伸びと育ってほしいという願いから生まれた。
「家族が多いから部屋数を多くするのではなくて、逆に細かく仕切らず、可能な限りシンプルな構造で、リビングをはじめ人が集まる場所を広くする。こ
れが基本の考え方なんです。吹き抜けがどうしてもほしかったというのも、開放感のためだけでなく、家族の声がどこからでも聞こえるようにしたかった
からです」遠山邸は、風の通りと採光を考えた設計にもなっている。東南の角地で三方道路である土地を探したのもそのためだ。ログハウスの能力を
考えると、風通しがよければ夏でもエアコンの必要はないはずだからだ。
南側に天窓を設けなかったのも、夏に室温が高くなり過ぎないようにするためである。一方、奥様が要望を出したのは、外壁と屋根の色、キッチンの広さ、ユニット式ではない洗面所、収納力のある下駄箱とウオーク・イン・クローゼットな
ど。女性ならではのこだわりだ。ご夫妻で意見が合わなかったのはストーブ。扱いや手入れへの不安から奥様が反対だったため、建築時にはあきらめた
が、どうしてもほしくなったご主人が冬を前にして導入した。
「部屋の真ん中に置きたいなんて無茶なことを言うから反対していたんですよ。色も主人が赤、私が黒と意見が分かれていたし。今は納得しています。
色も白にしてよかったと思います。でもやっぱり、火を着けるのが私には難しくって…」この家に引っ越してから、人がたくさん集まるようになったそうだ。「たまり場と言ってもいいですね」とご主人は笑う。
それは、この家の居心地がいいからに違いない。遠山さんの家づくりが成功したという証拠だ。 |