個性的な最新実例を満したログハウス専門誌
   




4.吹き抜けを囲むようにフリースペースが配置されている2階


5.和室の奥から見たリビング。和室の床は琉球畳。正面の細長い障子 戸を開けると、リビング前のデッキが見える。


6.広々としたバスルームには浴槽のすぐ横に窓が設けられ、その外の坪 庭が見えるようになっている

DATA
延べ床面積:157.1m2 1階86.7m2 2階70.4m2 デッキ(バルコニーほかを含む):21.5m2
主構造材の種類:国産杉、イエローシーダー
構法の種類:軸組み構法
基礎の種類:ベタ基礎
屋根材:ガルバリウム鋼板 
外壁材:ジョリパット 内壁材:ジョリパット、珪藻土
天井材:ジョリパット 床材:パインフローリング
総工費:3600万円
工事着工年月:2004年9月
完成年月:2005年3月
設計企業:(株)芳賀沼製作
施工企業:(株)芳賀沼製作
建物使用目的:住宅

施主の考えた間取りにプロの知識と技をプラス
 どんなものにも、セオリーや定番がある。だれもが「ここはこうするものだ」「そんなことはしない」と信じて いる。その傾向はプロのほうが強い。
  理由を問われると、たいていの場合「長年そうやってきた」と答える。事実だからこそセオリーとして定着し、伝承され続けたことは確かだ。たとえば、加藤邸の和室の框に使われている会津赤松は「新月伐採の葉枯らし乾燥」である。古来「 10月から12月の新月の日に伐採した木には虫がわかない」「枝葉を付けたまま林の中に寝かせて自然 乾燥させた木は割れたり反ったりしない」と言われているのだ。
  このことは、近年研究者たちによって科学的に検証され始めている。日本だけでなく世界各地に同様の 伝承があり、そしてそれが事実だからだ。 だが、セオリーのすべてが、永遠にどんな場合においてもベストであるとは限らないはずだ。 日本の家の場合、建築の伝統的なセオリーの多くは、日本の気候風土や主な建材である木の性質、平均的な家族構成やライフスタイルなどから生まれてきたもの。ところが、平均的な家族構成やライフスタ イルはもちろん、建材の性質や気候までも、ほんの数十年前とでさえ変わっているのが現実である。「昔はやらなかったけど今ならできること」だってあるかもしれない。
  加藤邸には、そんな「ふつうはこんなことやらない」コーナーがある。和室の床の間だ。 部屋の照明を消して床の間を正面から見ると、床の間の両脇から差し込む柔らかい光に気付く。実はこ の光、照明器具によるものではなく、ガラス窓からの自然光。なんと、床の間部分がわずかに出窓状に なっていて、その側面がガラス張りになっているのである。
  「両脇のガラスのアイデアにも驚きましたが、どうせ出窓状にするならもっと奥行を持たせるのがふつう だし、そもそも床の間を出窓状にはしないものです。そんなことできない、ということではなくて、言われて みれば難しいことではないけど、いままで考えたことがなかった、ということなんです」そう芳賀沼製作は言う。相手が素人であろうとも、謙虚に耳を傾ければ、プロだからこそ気付かなかった 新しい発想に出会うことがある。


隅から隅までアイデアと配慮が行き届いた家の完成
 ご夫妻は、結婚を機に新しい住まいを考えていた。自宅でピアノ教室を開きたいという奥様の希望をか なえるため、ピアノを置ける物件でなくてはならない。賃貸物件では選択肢が限られているだろうし、新築 するにしても土地探しから始めなければならない。簡単には実現しないだろう。 しかし、そんな予想に反して、奥様の希望はとんとん拍子に実現までこぎ着けたのだった。
  地主さんからメーカーも紹介してもらえた。それが芳賀沼製作だった。ご主人は、建築雑誌や書籍を読むだけでなく、建築に関するテレビ番組も欠かさず観た。生活動線や空間、風の通りなどを考えた間取り、プライバシー保護と採光を考えた開口部といった大き なところから、キッチンの高さや収納の位置、建具の種類といった細かな部分まで、設計の原案はすべ てご主人によるもの。
  玄関は、ピアノ教室の生徒が直接ピアノ室に入れるように配置。収納は、風の通る窓の配置と合わせ て考えて、天袋と地袋を多用した。和室の窓の位置と大きさなど、外からの視線だけでなく、中央の掘り 炬燵に座ったときの風景の見え方まで計算してあるという。それを芳賀沼がプロの知識と技で形にしたのだ。構造上の条件だけでなく、家相にまで配慮されている というから恐れ入る。
  「加藤さんのご要望を100%実現しつつ、美しさと実用性を両立させるよう努力し、和にも洋にも偏らな い本物の家になるよう心がけました。たとえば和室は、リビングとの連続性を重視しながらも、和室の法 則から外れないで繊細なデザインになるよう苦心しました」そう言う芳賀沼は、いい仕事ができたことに満足しているようだ。


ピアノ室は完全遮音構造にすると 音が響かずきれいに聞こえないの で、音が聞こえても構わない2階の 寝室に、天井を通して抜けるように 設計されている。

芳賀沼製作独特のデザインである 列柱。軒の幅は日照を計算して割り 出されている。
大黒柱は樹齢300年のイエローシー ダー。柱の縦ラインと梁の横ラインと が絶妙のバランスで美しい。
水回りコーナーの壁面にある小窓は、 光と同時に風を通すためのもの