国産ヒノキを使ったログハウス



自分の持ち山から切り出してきた国産ヒノキを使ってログハウスを建築

 岡山県の北部、鳥取県と境を接する中国山地のほぼ中央に位置する真庭市。ここ真庭には製材所が数多く立ち並び「木の町」として広く知られている。だが、今は国産の木材が売れない時代。国内に流通している木材のうち国産は2割程度で、残りは全て外国産と いうのが現状なのだとか。そんな状況を憂えて、「国産の木材、それも自分の所有している山から切り出してきた地元産の木材を使っ てログハウスを建ててやろう」と決意したのが家主の池元建二さんである。
  ログハウスを建築するための木材として選ばれたのはヒノキ。数ある木材の中でなぜヒノキを選んだのかをたずねると、「持って いる山をはじめ、この辺りの山にはヒノキが多いんです。戦前から戦中、戦後にかけて、植林されたものがちょうどいい具合に育ってきているのでね」という理由の他に、もうひとつの理由を池元さんは挙げた。それは「匂い」である。
  「家の中に入った瞬間に漂ってくる、あのヒノキ独特の匂いに惹かれましてね。私もここに住み慣れてしまったもので、普段の暮らし ではあまりそれを感じられなくなっていますが、2~3日仕事で家を空けた後に玄関の扉を開くと、その鮮やかな香りを再び感じられ るんですよ」と池元さん。その言葉の通り、建築から1年以上経過した現在でも、心地よいヒノキの香りが、玄関へ入った瞬間にしっか りと感じられた。

同じサイズの真っ直ぐなヒノキを探していくつもの山を歩き回った

 全国的に見ても稀なヒノキを使ったログハウス作りに挑戦したのが、地元の木や自然素材にこだわった家作りを続けている、ログ ハウスビルダーの植木衆さん。植木さんにとってもヒノキを使ったログハウス作りは、はじめての経験だったということだが、「池元 さんも私も、変わったことをするのが好きなもので」と笑いつつ、その依頼をすぐに受諾した経過を話してくれた。
  ただし、実際に建設がはじまるまでには結構な時間がかかっているそうだ。自分の山のヒノキを使ってログハウスを建てたい、とい う話が出たのは01~02年頃のこと。それから、池元さんの所有している山へと出かけ、建築材料となるヒノキ探しがはじまったのが 03年のことだという。
  ログハウスで主に使う予定だったヒノキの平均口径は25cm。一般的にログ材として使われている杉に比べ、成長するのに2倍の 時間がかかるというヒノキ。その特徴は樹質が非常に硬く、耐久性が高い利点はあるものの、歪みが多く真っ直ぐに伸びているものが 少ないことに加え、きちんと乾燥させないと割れが出てしまう難点もある。そうした条件を全て飲んだ上で、同じサイズの樹木を大量 に探すとなると、かなり大変な作業だったようだ。「結局、いくつもの山を探し回って、ようやく150~160本のログ材として使えるヒノ キを調達することができましたよ」と、そのときの苦労話を語ってくれた。

自分の木で建てられた家に住むというお金ではあがなえない安心感

 苦労の末に調達したヒノキは、冬に切り出しを行った後、春までの約3ヶ月間、その場に置いて葉干しを行った。それから工場へと運 び、2度のピーリングを実施。1回目は水圧でピーリングし、そのまま1年間放置して木を自然乾燥させ寝かせた。2回目はナイフを使 ってハンドピーリングを施すことで、ようやくログ材として使える状態になった。なぜ、製材をそこまで丁寧に行ったのだろうか、植木 さんにたずねてみた。「ヒノキでログハウスを建てるのがはじめてだったということ以上に、相手は自然の木なので、切り出した後で どのように変化するかわからず気を使いましたよ。急に乾燥させると、ヒノキが暴れたり(曲がったり)、割れたりしてしまうことがある ので、乾燥にじっくり時間をかけ、ピーリングの作業も2度行いました」
  手間ひまかけて完成したログハウスは、9割以上が自家製のヒノキ材でまかなわれている。丸太として使用した以外にも、ログ材の寸 法に合わせて切り落とした部分を板などに再加工することで、土台や根太をはじめ、デッキなど、様々な場所で無駄なく使用。乾燥に 時間をかけたことに加え、植木さんの丁寧な仕事によって、ノッチやログ壁がぴっちりとすき間なく積まれていることもあり、湿度の変 化で木材がきしむ音を池元さんは、いまだ聞いたことがないそうである。
  また、自然材を使うにおいて池元さんがこだわったのは、ヒノキの根張(根株)の広がりを生かす点である。梁など、丸太が飛び出し ている部分には、木を切り出したときのままの輪郭が保たれており、それが趣ある味わいを醸し出している。
  「実際に住んでみると、ヒノキの直径が細いこともあって、圧迫感が少ないのがいい」と住み心地に関して語った池元さんは、同時に 「地元産のヒノキにこだわって作ったけれど、価格の面では、自分の山から木を切り出してきたからこそ建てることができた」と話す。 だが最後には、「外材を買えば、もっと安くログハウスを建てられたでしょう。でも、自分が生まれ育った地元の山から切り出してきた “自分の木”を使って建てられた家に住んでいるという安心感は、それに代えがたい価値がありますからね」と、地産地消の素晴らし さについても語ってくれた。

左:この角 度から眺めてみると、デッキがしっかりと屋 根で覆われているのがわかる。デッキの下のスペースは少し掘り下げて駐車場に。使い勝手がよく大変便利、ガレージの前では飼い猫や地域猫がのんびりと食事をしている。
右:玄関を入ると、その 右 手にはキッ チンが 設けられている。「すっき りと納まった、使い勝手のいいサイズが気に入っている」と奥様。また、キッチンに設けられたテーブルは、裏山から切り出してきたというケヤキの巨木から作られている

 
左:ご主人の趣味である玩具が置かれた棚。左は残ったヒノキで作られた照明
右:階段の横に置かれている薪ストーブは池元さんが憧れていたという設備。「暖かいのがいいし、その火の光を眺めているのもいい」





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